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2017年8月8日火曜日

対角化

 正方行列Aに対して、固有ベクトルを並べた正方行列Pを取ると、対角行列はP1APのように求められます。この操作は対角化と呼ばれます。対角行列というのは、正方行列の右斜め下方向の対角成分だけを持つ行列です。 P1AP=(λ10000λ20000λ30000λn) ここで、λ1,λ2,,λnは正方行列Aの固有値になります。正方行列Aが行と列にそれぞれn個ずつの成分を持てば、n次正方行列と言います。 A=(a11a12a1na21a22a2nan1an2ann) また、Pは、正方行列Aの固有値に対応する固有ベクトルを並べたものです。固有ベクトルをx1,x2,,xnとおけば、対角化の操作に使われる正方行列PP=(x1x2xn) となります。
 対角行列を具体的に求める前に、対角化の意味とメリットを考えてみましょう。P1APという行列表現は、新しい基底を座標系とした場合の線形変換を表しました。ただし、新しい基底は固有ベクトルの組になっていて、線形変換の行列表現は対角行列になっています。対角化操作を表す式をm乗すると、 (P1AP)m=(λ10000λ20000λ30000λn)m となります。左辺は、 (P1AP)(P1AP)(P1AP)=P1AmP となります。対角行列をm回かけた行列は対角成分をそれぞれm乗したものになりますから、右辺は (λm10000λm20000λm30000λmn) となります。つまり、 P1AmP=(λm10000λm20000λm30000λmn) です。ここで、両辺の左からPを、右からP1をかけると、 Am=P(λm10000λm20000λm30000λmn)P1 となります。したがって、行列のm乗の計算を単純にできるのです。
 では、行列の対角化を具体的に行ってみましょう。正方行列AA=(3542) とします。前の回で固有値と固有ベクトルは求めました。それを使えば、固有ベクトルを並べた行列 P=(1514) に対して P1AP=(2007) となります。固有値と固有ベクトルは対応する順番に並べることに注意します。

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