正方行列Aに対して、固有ベクトルを並べた正方行列Pを取ると、対角行列はP−1APのように求められます。この操作は対角化と呼ばれます。対角行列というのは、正方行列の右斜め下方向の対角成分だけを持つ行列です。
P−1AP=(λ100⋯00λ20⋯000λ3⋯0⋮⋱000⋯λn)
ここで、λ1,λ2,⋯,λnは正方行列Aの固有値になります。正方行列Aが行と列にそれぞれn個ずつの成分を持てば、n次正方行列と言います。
A=(a11a12⋯a1na21a22⋯a2n⋮⋮⋱⋮an1an2⋯ann)
また、Pは、正方行列Aの固有値に対応する固有ベクトルを並べたものです。固有ベクトルを→x1,→x2,⋯,→xnとおけば、対角化の操作に使われる正方行列Pは
P=(→x1→x2⋯→xn)
となります。
対角行列を具体的に求める前に、対角化の意味とメリットを考えてみましょう。P−1APという行列表現は、新しい基底を座標系とした場合の線形変換を表しました。ただし、新しい基底は固有ベクトルの組になっていて、線形変換の行列表現は対角行列になっています。対角化操作を表す式をm乗すると、
(P−1AP)m=(λ100⋯00λ20⋯000λ3⋯0⋮⋱000⋯λn)m
となります。左辺は、
(P−1AP)(P−1AP)⋯(P−1AP)=P−1AmP
となります。対角行列をm回かけた行列は対角成分をそれぞれm乗したものになりますから、右辺は
(λm100⋯00λm20⋯000λm3⋯0⋮⋱000⋯λmn)
となります。つまり、
P−1AmP=(λm100⋯00λm20⋯000λm3⋯0⋮⋱000⋯λmn)
です。ここで、両辺の左からPを、右からP−1をかけると、
Am=P(λm100⋯00λm20⋯000λm3⋯0⋮⋱000⋯λmn)P−1
となります。したがって、行列のm乗の計算を単純にできるのです。
では、行列の対角化を具体的に行ってみましょう。正方行列Aを
A=(3542)
とします。前の回で固有値と固有ベクトルは求めました。それを使えば、固有ベクトルを並べた行列
P=(15−14)
に対して
P−1AP=(−2007)
となります。固有値と固有ベクトルは対応する順番に並べることに注意します。
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