パターン認識理論には色んな理論や手法が提案されており、とても複雑に見えます。ただ、一つ一つ整理すれば、一見複雑に見えることでも、納得して先に進めます。ここで、パターン認識理論全体を俯瞰して、これから辿る道しるべにしましょう。表1に、パターン認識理論の概要を示します。
表1:パターン認識理論
教師あり学習
識別方法
確率による方法
距離による方法
関数による方法
部分空間法
誤識別率推定方法
特徴抽出方法
特徴選択
特徴抽出
教師なし学習
クラスタ分析
階層的クラスタリング
非階層的クラスタリング
パターン認識ではパターンをクラスに分類する必要があり、そのクラスの決め方には色々な手法があります。きちんとクラス分けできるようにするには、クラスを正しく決定する必要があります。一般にその決定境界が重要になりますので、その決定境界を正しく設定することが学習に当たります。
学習には、教師あり学習と教師なし学習があります。教師あり学習は、与えられた知識に基づいて学習を進める方法です。パターンが属するべきクラスが与えられ、どのクラスに属しているか判定していきます。教師あり学習は、予測や診断などに応用されます。どのクラスに属するかわかっているパターンを使って、将来観測するパターンがどのクラスに属するか予測します。多変量解析では、判別分析と呼ばれます。これに対し、教師なし学習はクラスの分布がわかっておらず、クラスの分布の構造を明らかにすることに主眼が置かれます。どのクラスに属するか不明なパターンがあり、パターン間の類似性や統計的性質に基づいてグループに分割します。このグループは、クラスタといいます。教師なし学習は、構造や性質の推測などに応用されます。同じような性質を持つと考えられるパターンを集めてクラスタを作り、そのクラスタ同士がどのような関係にあるか推測します。本来的に正解が存在しませんので、推測の正当性が問題になることがあります。導出された構造や性質の意味は、慎重に解釈されなければなりません。多変量解析では、クラスタ分析と呼ばれます。
パターン認識は、パターンをクラスに分類します。このとき、クラスを代表するパターンを用意して、その代表と個々のパターンを比較することによりそのクラスに属するかどうかを識別します。この識別を行う部分が、識別部です。クラスを代表するパターンは、プロトタイプと呼ばれることがあります。
ここで、重要なことが2つあります。一つは、クラスのパターン分布が未知だということです。そこで、例えば、クラスの分布を正規分布と仮定して、平均と分散を推定するやり方がパラメトリック識別器です。正規分布といった仮定をおかず、プロトタイプとの距離や確率分布の組合せを使うやり方がノンパラメトリック識別器です。平均と分散を推定するとき、パターン分布からサンプルを取り出します。このサンプルは、識別器の設計(学習)に用いられるサンプルという意味で、訓練サンプルと呼ばれます。もう一つは、平均や分散の推定が正しいかどうか、つまり、識別器の評価が必要だということです。既知の訓練サンプルに対して識別器がうまく働いてもしょうがなく、未知のパターンに対して識別器がうまく働いて欲しいわけです。ところが、パターンはそうそう手に入るものではありません。そこで、訓練サンプルに用いられなかったサンプルを評価に使うことがあります。これは、評価サンプルと呼ばれます。誤識別率推定方法は、訓練サンプルと評価サンプルの決め方と誤識別率の推定法に関する理論です。
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