対称行列というのは、右下斜めの対角線に対して成分が対称になっている行列です。例えば、
\begin{equation}
A = \begin{pmatrix} a & b \\ b & d \end{pmatrix}
\end{equation}
とかです。転置の記号を使うと、
\begin{equation}
A = A^T
\end{equation}
と表せます。転置行列の計算には気を付けることがあります。
\begin{equation}
(AB)^T = B^T A^T
\end{equation}
となって、順序が入れ替わることに注意します。
対称行列のメリットは、対称行列の固有値に対する固有ベクトルが直交するということです。例えば、対称行列
\begin{equation}
A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 4 \end{pmatrix}
\end{equation}
の対角化を考えます。行列式は
\begin{equation}
\det ( A - \lambda E ) = \det \left \{
\begin{pmatrix} 2 & 2 \\ 2 & 5 \end{pmatrix} - \lambda \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}
\right \}
= \det \begin{pmatrix} 2 - \lambda & 2 \\ 2 & 5- \lambda \end{pmatrix} \\
= ( 2 - \lambda )(5 - \lambda) - 2 \cdot 2 = \lambda^2 - 7 \lambda + 6 = ( \lambda - 1 )( \lambda - 6 )
\end{equation}
となり、固有値は\( \lambda = 1, 6 \)と求まります。
固有ベクトルを\( \begin{pmatrix} x & y \end{pmatrix}^T \)とすれば、連立方程式は
\begin{equation}
\begin{pmatrix} 2 - \lambda & 2 \\ 2 & 5- \lambda \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
= \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{equation}
となります。\( \lambda = 1\)のとき、\( x + 2 y = 0 \)ですから、
\begin{equation}
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix}
\end{equation}
となります。\( \lambda = 6\)のとき、\( 2 x - y = 0 \)ですから、
\begin{equation}
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}
\end{equation}
となります。これらの固有ベクトルの内積を計算すると、0になりますから、確かに直交しています。
固有ベクトルは定数倍してもよいですから、大きさが1になるようにとります。大きさが1になるということは、単位ベクトルということです。これは正規直交基底そのもので、三次元ならば以下の図のように表されます。
対称行列のメリットは、基底の取替え行列が正規直交基底となり、計算が簡単になることです。
\begin{eqnarray}
\vec{e}_1 \cdot \vec{e}_1 = 1, \ \ \vec{e}_2 \cdot \vec{e}_2 = 1, \ \ \vec{e}_3 \cdot \vec{e}_3 & = & 1 \\
\vec{e}_1 \cdot \vec{e}_2 = 0, \ \ \vec{e}_2 \cdot \vec{e}_3 = 0, \ \ \vec{e}_3 \cdot \vec{e}_1 & = & 0
\end{eqnarray}
もう一つのメリットは、逆行列の計算が簡単になることです。行列\(A\)が表す一次変換を、基底の取替え行列\(P\)として正規直交基底(固有ベクトル)を並べて作った行列で表せますから、逆行列は転置行列と同等になります。
\begin{equation}
P^{-1} = P^T
\end{equation}
0 件のコメント:
コメントを投稿